『読書進化論』勝間和代

「ウェブ」の誕生により、「本」の意味、読書の意味は大きく変わってきている。本書では、「本とウェブ」の立ち位置を明確にしつつ、今の時代の「本の読み方」「本の書き方」「本の売り方」について書いている。
「本の読み方」、および「本の書き方」を書いた本はあれど、一般人向けの書籍に「本の売り方」まで書いた本は非常に珍しい*1。出版業界にいる人間として、「本の売り方」の章を非常に興味深く読んだ。おっしゃることは本当にごもっともで、4Pのうちの「プレイス」と「プロモーション」が非常に弱い。致命的に弱い。マーケティング的な視点があまりないのは分かっているができない*2ってのもあるが、努力不足というのも大いにあるだろう。漫然と書店に並べていて売れるワケがない!そんなことはもうとっくに分かっているはずなのに・・。
それに比して勝間さんの(著書を含め)自分プロモーションの上手いこと!ただ、好循環を回すのは不断の努力の賜物なんだということを忘れてはいけない。たとえば、勝間さんがこれまで本を出すときは、勝間さんのほうからお話をもちかけ編集者だけでなく営業やマーケティング担当など関係者全員でミーティングをし、情報共有をしているそうだ(まさに「プロジェクトを進めている」という感じ。通常は「プロジェクト」というより著者対編集者、編集者対営業という点と点だけを結んでいる感じ)。自分の著書がどう読まれているかを確かめるため、普段からgooglemixiでご自分の名前をチェックしたりもしているそうだ。本書だって、すでにYouTubeで読者に向けてのメッセージを発信したり、「ブックラバーズ」というサイトもオープンしている。なんというすばやさ!なんという行動力!
出版業界にいる人は、「書けば売れる著者」であるばかりでなく「読書の大切さ(=本のすばらしさ)をこれほど協力にPRしてくれる人」であり、はたまた「売り方まで指南してくれる人」である勝間さんに学ぶことがこんなにあることをもっともっと知るべきだ!
その他、気になったキーフレーズ:「読む」については「ブログの記事や友だちの話より質が高い本を選ぶ」ことと、「読書もフレームワークがあることで、さらに知識が身につく」ということ。

*1:業界向けの本で『どすこい 出版流通』とか『石塚さん、書店営業にきました。』とかあるけど

*2:本書でもあるように多種類を少部数ずつ刊行するモデルだとやりにくい。ただその売り方だけでいいわけがいない。使い分けが大事。