グローバリゼーションのない業界

格差社会と呼ばれる現代日本の様々な側面を取材してまとめた『港区ではベンツがカローラの6倍売れている』のあとがきでこんなくだりがあった。ちょっと長いが引用する。

近年の格差の拡大のもうひとつの主原因は、グローバリゼーションということになるだろう。
(略)
私は、社会人になってからこの方、出版会で飯を食わせてもらっていて、以来ずっと売上は微減、ずっと不況、という感じだが、グローバリゼーションに直面している業種は微減なんて生やさしいもんじゃない。十分の一とか、下手をすればゼロになっている。世の中、そういう産業だらけだ。
私のようなライターは、日本語という巨大な輸入障壁があるから助かっているが、ライター業が中国に下請けに出せるようになったら、たちまちおまんまの食い上げだ。もし中国人ライターが日本語を自由に操るようになって、われわれ日本人ライターが路頭に迷うことになったら、私はグローバリゼーションを恨むだろう。が、このグローバリゼーションというやつ、どうやっても止めようがない。(以下略)
港区ではベンツがカローラの6倍売れている―データで語る格差社会 (扶桑社新書 26)

同じ業界だから当たり前だが、状況は編集者でも全く一緒。一部、組版を中国だかに出すとか、印刷を海外でとかいう話は聞いたことがあるが、今でも圧倒的に地産地消の国内産業。広がりもしないが、強烈な競争にもさらされず、安穏と暮らせている。心しておかねば。