『LEONの秘密と舞台裏』 岸田一郎

『LEON』いまさら言うまでもなくといえば、「ちょい不良(ワル)」「モテ」「オヤジ」などの言葉を流行らせた中高年雑誌だが、その編集長岸田氏が創刊から現在にいたる成功までを描いた本。彼の生い立ちやココまでの経歴も記している。岸田さんは最近テレビでもちょくちょく見かけて、自身が広告塔になっている観があるけど、とうとう本まで出したか。

雑誌はかなりイッテいるイメージだが、ここで言っている成功する雑誌のセオリーはいたって真面目でまとも。「モテるオヤジ」向け雑誌を作りたい!と創刊したのではなく、40〜50代の富裕層男性には未開拓のマーケットがあり、広告クライアントも存在すると気付いたから、そこに向けて何ができるかを考えた結果が、あの雑誌になったのだ、と。

もちろん「独自の切り口」は必要なんだけど、「採算とれてナンボ」ということを忘れてはいけないと繰り返し繰り返し説いている。また、雑誌は部数至上主義ではなく、どちらかというと広告収入を上げていこうスタンス。部数は実はあまり気にしていないらしい(とはいえ10万部は出ているらしいが)。広告主・雑誌・読者の3者がすべてハッピーになろうというのが先。さらに、高級ライフスタイル誌だから、雑誌ブランドにもとても気を使っている。

『LEON』や『NIKITA』をして中身がない外面だけの雑誌を評する人がいるが、それはお門違い、という。たかだか読み捨て月刊誌で内面も外見も磨こうというのがどだい無理な話。中身を磨くのはほかでやってもらい、この雑誌では外面をちょいよくするためのテクニックを伝えるのが使命と言っている。しかもあまり努力したり、オタク的にのめりこんだりしないで、「ちょい」と「テク」をつけて「モテる」ための、ね。

本書のなかで失敗する雑誌の特徴としてよく上がっていたのが、「編集部員が自分たちに酔って創るような雑誌」、「オタクすぎる雑誌」、「プレスリリースの後追い雑誌」。言われて見れば当たり前だけど、創刊されては消える雑誌たちはどこかに当てはまっているわな。『LEON』や姉妹誌『NIKITA』は、中身の好き嫌いはともかく、強烈な個性をもっているもんなぁ。ついていく人はついていく、これでいいのだ。

雑誌はほとんど参加したことがないけど、こんな編集長の下で働いたら、大変そうだが実力はつきそう。

下記に、オズマピーアールのインタビューがある。本書とはまったく関係がないが、ちょうどこの本のエッセンスが詰め込まれたかのよう(笑)。
http://www.ozma.co.jp/about/11.html

装丁:久住欣也、安達恵美(Hisazumi design inc) イラスト:bOi