『ザ・エージェント』 鬼塚忠

ザ・エージェント

ザ・エージェント

日本ではまだまだ珍しい、作家のエージェンシー「アップル・エージェンシー」を作った鬼塚氏の経緯とノウハウをまとめた本。サブタイトルに「ベストセラー作家を探しつづける男」とあるように、「作家のエージェンシー」は常に売れる作家を見つけ出し、適切な版元に売り込んでいくのが彼の仕事。

編集者は本の企画から、執筆依頼、装丁・デザインの発注、印刷・製本のところまでトータルで見る仕事だが、「作家のエージェント」は、本のネタ(著者)と版元をつなぐ役割。つまり、企画力とプレゼン力の勝負となる。この手のエージェントは、欧米では当たり前だが、日本ではほとんどない*1

もともと、版権売買をするイングリッシュ・エージェンシーに勤務していた鬼塚氏は、日々送られてくる海外からの本の目次とあらすじを大量に見ているうちに、「目利き」になったという。それを証明するのが、「(エージェントをたちあげて)3年間で5万部以上のヒットを12冊」。やっぱりすごい(ふと、作品履歴を見たら、知らず知らずに読んでいる本も結構あることがわかった)。


内容は、作家のエージェント業についての説明*2、本人や会社の経歴、ベストセラー作家の見つけ方・育て方*3、作家になるには、など。

とにかく面白いことはないかを日々考え、著者(候補)と会っては企画をたてる。よし!と思ったら版元へ売り込む。そんな毎日をなによりも熱く、そして、楽しくこなしているのが、よく伝わってくる。

会社の営業ツール的な意味や読んで元気になる本という側面から、つらいこと、面白くないこと、失敗談などは割愛しているだろう。でも、読んでワクワクしてくるんだから、それでよし。

こういう優秀なエージェントさんばかりになったら、編集者の仕事もあがったりだな。負けてはいられないぞ。

なお、この本自体の誕生秘話はここに。これも面白い。

*1:土井さんの「ほんなる」は似ていて非なる・・な

*2:その中で、野茂と団野村の話を引き合いに出しているが、エージェントのすばらしさをすごく上手〜く伝えている

*3:物語系とハウツー系にわけて説明してあるのもさすがだが、両者ともまんべんなくできるのもさすが