『いつでもクビ切り社会』森戸 英幸

「エイジフリー」の罠 いつでもクビ切り社会 (文春新書)

「エイジフリー」の罠 いつでもクビ切り社会 (文春新書)

センセーショナルなタイトルだが、不安をあおるタイプの本ではなく、今の日本の「年齢」に対する考え方と、世界のトレンド、今後どのような流れになっていくかを法律の専門家が分かりやすく(時にはかなりくだけて)解説した本。

著者のスタンスとしては、エイジフリーってバラ色の未来だけではないよ、大丈夫?と心配しつつも、徐々にエイジフリーになっていかざるを得ないよねというもの。これからの少子高齢社会、高齢者といえでも働かなければ社会はなりたっていかない、が、もし年齢の基準をなくすと、能力を基準として人の雇用を調整しなくてはならなくなり、それは企業にとっても労働者にとってもしんどい。また、日本の文化にも「年齢基準」というものが深く根付いている。

20年ほど前、男女雇用機会均等法が出来る前は「女性差別は当たり前」だった。それが今は段階を経て、随分男女差別が少なくなってきた(もちろん、まだあるが)。もし今、強固に「年齢差別反対」をうたった法律ができれば、数十年後エイジフリー社会ができつつあるかもしれない。が、まだ法律が整備されているわけではなく(年齢差別を禁止している面もありつつ、定年制は認めている)、完全なエイジフリー社会がやってくるとしても、かなり先になるのではないかと思う。