『冷蔵庫のうえの人生』アリスカイパース 八木明子

冷蔵庫のうえの人生

冷蔵庫のうえの人生

今月号の『ダ・ヴィンチ』で紹介されていて気になったので読んでみた本。
とっても多忙な産婦人科医のシングルマザーと15歳の娘クレアは、冷蔵庫のドアにメモを残すという形ですれ違いの日常のコミュニケーションを取っていた。買い物リスト、なくした鍵のこと、ボーイフレンドのこと、はじめはどこにでもあるようなメモの交換だが、途中で母が乳がんになり、様子が変わってくる。病気を宣告され葛藤がおき、2人は大喧嘩をする。やがて病気の進行とともに働く強くたくましい母が気弱になり、幼い娘は徐々に現実を受け入れていく。最後のクレアから母への手紙には涙を誘われる。
これが、全編メモだけでつづられているのが一風変わったところ。前後のメモで話が飛んでいるところは母娘で直接会話が進んだろうなとほっとし、メモ上で喧嘩するところではもどかしく感じ・・・、読める部分はもちろん、読めない部分で気持ちを動かされる小説になっている。
そういえば、私の母も(この本の母ほど多忙ではなかったが)働いていたので、テーブルの上のメモというのは学生時代、日常だった。私の母の場合事務連絡がほとんどだったけど(おやつとか、お小遣いとか、やっておくべきこととか)。
メモで進む話なので、非常に早く読めるが、日常ってありがたい、親の愛ってすばらしいと思える小説だった。