『お金は銀行に預けるな』勝間和代

私も多くの人同様、お金の基礎知識を学ぶことなく社会に出た。「倹約の美」や「労働の尊さ」を学ぶことはあっても、それをどう使うか、ましてやどう増やすかなんて知らずに大人になったのだ。
もちろん、お金はあるに越したことがない。増やせるものなら増やしたいと思う。だけど、それをあれこれ考えるよりも「汗水流して働け」という価値観が染み付いていた。
が、本書の冒頭で説明しているとおり、「金融リテラシーが働きすぎを救う」という理論でガラッと印象が変わった。それは、

安全資産を多く持っているということは、家計資産のほとんどを労働による収入に頼らなければならない
 ↓
リスク資産を回避し、労働力による収入を生活の中心にすると、より長時間労働に頼らざるを得ない
 ↓
長時間労働によって起こっている大きな問題の1つが少子化(女性が働きながら子育てすることが難しい、男性の育児参加が少ない)
 ↓
では、どうすればいいか
 ↓
金融資産収入が多ければ、今のように長時間労働が必要ない
 ↓
金融リテラシーを身につければ、ワークライフバランスの改善に繋がる

というもの(「お金を稼ぐためだけに働いているのではない」など細かい労働意識については、ここではいったんおいておく)。
著者の勝間さんのライフワークが、

1)現代日本に生きる多くの人がワークライフバランス(仕事と生活の調和)をもっと上手に整えられるよう、労働時間短縮に向けたしくみ作りを手伝うこと
2)(著者の専門である)金融・経済・会計の知識を社会に還元するために、分かりやすく伝えていくこと

というが、一見かけ離れている2つの目標であるようで、これがこんなに深く繋がっているものとは。
お金欲しいでしょ、お金持ちいいよね、だからお金増やそうよ、という理論では、どうもついていけないが、「投資がライフワークバランスを整える」というなら、話は違う。いままでの「お金本」に一番欠けていたのは、ここなのでは。
本書では、このように「なぜお金について学ばなくてはならないのか」を明らかにしたうえで、金融リテラシーをつけるにはどうすればいいのかの触りの部分を解説している。タイトルのように「銀行に普通預金として預けっぱなしでは、危険である」ということや「金融リテラシーを身につけるための10のステップ」などなど。
投資はギャンブルではないので、一朝一夕でどうなる問題ではない。何年もコツコツ勉強し、コツコツと投資し続けなければならないが、私も「仕事も大事、家庭も大事、そしてお金も大事」だもの、勉強を続けていきたいと思う。

お金は銀行に預けるな   金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)

お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)