『迷産時代』 宇佐美游

迷産時代

迷産時代

産むことに迷っている30代女性を描いた連作短編小説集。河合蘭さんいうところの「未妊」状態の人たちの揺れる気持ちを、それぞれの立場を変えて(たとえば、不妊治療問題、仕事との両立問題、親(親戚)との確執や介護、夫婦問題、年齢の壁、シングルマザーなどなど)描き出している。みんな「どこにでもいそうな」「自分もしくは自分の周りにいそうな」感じの人ばかりだ。

迷ったら産めない、でも、迷いがでないわけがない問題。特に年齢という大きな壁がある女性にとっては、本当に大きな問題。「壁」とならず、自然にポンとできたらいいのにね。ちなみに、それぞれの主人公の女性たちは迷いながらもそれなりの結論を出してはいるが、最後の作品以外はみんな産んだかどうかの結果まで書かれていないのもこのテーマを象徴しているのかも。

ところで、私は「経産」だし、今妊娠中。なにも迷っていないはずなのに、なぜこういう本に興味を覚えてしまうのだろう。自分でも不思議。

装丁:重原隆 装画:いとう瞳