『ABC青山ブックセンターの再生』浅井輝久

本屋のホンネ」さんところで紹介されていたのを見て、興味を持って購入。

衝撃をもって伝えられた青山ブックセンター(ABC)の倒産から早3年。ある店は店名が変わり、ある店は閉鎖され、経営母体としては親会社が変わり、再スタートを切っているABC。タイトルどおり捉えれば、その「再生」の秘密が書かれているのかなぁと思ったら、倒産前後に変わらず一貫しているABCの経営方針・理念を語る本である。なぜあれほどまで人気のあるABCが倒産したのか、その後どんな経緯で再生されたのかが書かれているともっと面白かったのに。

(書店経営は黒字で、別の要因で倒産したとはいえ)一度はつぶれた書店の特色を、ここまでヨイショして熱く語るというのは、正直驚きだが、それもABCのなせるわざ?確かに書かれていることが実践されているなら、すばらしい書店だ。書店員を経験したことがないため、詳細にわたって書かれているノウハウをありがたく受け止めることができないが、ABCのファン、書店経営を学びたい人や、書店員を志す人にはオススメ。

個人的には、第3章に「ABC倒産の背景」として、「出版バブル」*1「書店バブル」*2など今業界をとりまく問題がまとめて指摘されている章が一押し。

ちなみに、新風舎の文庫って初めて買ったんだけど、年間142冊も出しているとのこと*3(p155)。そんなにあったのかーと驚き。

ABC青山ブックセンターの再生 (新風舎文庫)

ABC青山ブックセンターの再生 (新風舎文庫)

*1:いわゆる「バブル」は「土地」を媒体にしたが、「出版バブル」は「紙くず」を媒体にしているんだって。なるほどー。

*2:最近とみに顕著になった、右手に「開店口座」左手に「リースシステム」の仕組みをもった大型書店の攻勢。

*3:2005年の統計。ちなみに、363冊出した新潮文庫を筆頭に、年間2冊以上新刊文庫を出した版元が171社、総計7579冊あるそうだ(元は『出版年鑑2006年度版』)。文庫出しすぎっ。