『釈迦』瀬戸内寂聴

釈迦 (新潮文庫)

釈迦 (新潮文庫)

タイトルからもわかるようにブッダについて、従者のアーナンダの視点から書かれた仏教小説。普段、仏教などにはほとんど触れない生活をしているのだが、なぜかふと手に取って読んでみた。

従者として長い間、釈迦と行動をともにしてきたアーナンダが、ときに回想なども交えて晩年の釈迦を描写するというかたちを取っている。

お釈迦さまについての知識はほとんどないが、ここに描かれているのは人間くさい面も多い。多くの人を救い、存在するだけでみんなの心を洗うような人だったという面も多く描かれているが、晩年ということもあるのか、体の不調を訴えたり、昔語りをする様子なども描かれている。それになによりも、シャカ族の王子として生まれた釈迦は、妻子も家も王位も捨て、突然旅に出たり、後になってわが子や弟までも勝手に出家させている。そのため妻や父の苦悩がかなり克明に描いている。本当に人を救う人が家族を捨て、悩ませることをしていいのか、なんて思っちゃう(ように書いている)のだ。これは作者の意図するところ?

仏教や「生きるとは」「苦悩とは」「欲とは」「正と死」などについては、考えだすと尽きないものだが、普段意識しないところを想ういいきっかけとなった。