幸せなEarliest Memoryを

自分が覚えている一番昔の記憶はなんですか。

私にとっての古い記憶は、時期がかなり特定できるものとして、妹が初めてタッチできたのを家族みんなで大喜びしたときのこと。自分の子のときは、時間をかけてはじめの一歩から数歩、よちよち歩きへと移行していったので、これ!という決定的瞬間を覚えていないのだが、なぜか妹のタッチ記念日はかなり鮮明だ。応接間のソファにつかまって、よたよたした姿と、家族中で大拍手をしたシーンが今でもはっきり思い出せる。ただし、この話を母に話したら、そんな記憶はないそうだが(笑)。

また、それと時期が前後するが、実家では妹が生まれてしばらくして車を買った。車屋さんへ父だけで見に行って、私たちは家で待っていたのだが、「お父さんはどこいったの?」という質問に対し、「車を買いにいったんだよ」という会話。なぜかこれも覚えている。車がくるというビックイベントに興奮していたのか、休みの日なのにお父さんがいないという気持ちからなのかはわからない。

両方ともその記憶が確かなら、4歳になる。2、3歳くらいから記憶がある人も多いから、忘れっぽさはその当時から健在だ(笑)。

ずっと以前、同じ質問を父にしたことがある。父の答えは私にとっては衝撃だった。父の一番古い記憶は、なんと「空襲」。昭和16年生まれの父は、終戦当時4歳。記憶が残っていて当然だ。でも自分の生活にまるでない単語だったので、聞いたときは驚いた。生命をかけて逃げ惑っただろうから、かなり強烈なインパクトで記憶されているのだろう、空襲警報の音が本当に怖かったと言っていた。ちなみに、当時父の一家は疎開をしていたが、調べてみたらその地で大空襲があったのは昭和20年6月20日。たぶん、この日の記憶ということになる。

チビは、今3歳。大きくなったときに、一番初めの記憶として何を残しているだろう。幸せな記憶が残っていることを願っている。65年めを迎える開戦の日に、そんなことをふと思った。