冗談ではすまされない!

お昼ごろ、夫、チビの3人で電車に乗っておでかけした。チビと電車で出かけるときは、たいてい先頭車両の一番前に乗って、運転席越しに前を眺める。今日も定位置にいた。

天気もよく、電車も快調に走る。電車好きのチビは、ほんのちょっとことでも大興奮(電車がすれ違ったとか、駅を通過したとか)。ボルテージがあがりっぱなしのチビを抱えつつ、相変わらず電車に乗るだけでこんなに楽しいなんて相変わらず幸せなヤツだなんて思っていた。

目的地でもある終点駅ホームに差しかかり、あと少しで到着といったとき・・・。

目の前で、ふわっと線路に降りた人影が。なぜだかこっちを向いてニヤリとしながら。

激しく鳴らされる警笛、耳を劈くブレーキ音。にわかにざわつく車内。

駅に止まるべく、かなり減速していた電車は、線路に飛び降りた人の手前で止まることができた。すぐに運転手が運転席から飛び出す。すると、あろうことか、降りた男はこっちに向かって「すまん、すまん」というしぐさをし、自力でホームに登っていくではないか!

どう見てもワザと、線路に降りたという風情だ。ふらついたとか、気を失ったとか、はたまた(嫌な話だがあることを目的に)飛び込んだというわけではない。十分止まれる距離を計算し、線路に降りた。ただ、それだけ。

その男はすぐに駆けつけた駅員に取り囲まれた。詳しい事情は分からないが、一部始終を見ていた私には、新手の愉快犯にしか見えなかった。いったい何を考えているのか。自分の命のこと、他人の迷惑のことを考えたことがあるのか!怒り、呆れ、嫌悪感、虚無感がない交ぜになったような不思議な感情が一気に沸いてきた。

その後、電車は「人身事故があった」というアナウンスを残し、何事もなかったように残りわずかの距離動いて駅に着いた。


今回は何事もなかったからよかったけど、もしもあそこで何かが間違ったら・・・しばらく電車に乗れない事態になっていたかもしれないと思うと、ぞっとする。

幸いチビは、この光景をどの程度見ていたかわからないが、状況が理解できなかったようだ。夫は事故(事件か?)当時、「見るな!」とチビと私の目を押さえようとした。チビと一緒に前を凝視していた私は絶対確信的に降りた(=電車は止まれるし、この人の身には何も起こらない)ととっさに感じたが、ぼんやりと外を見ていた夫はかなり深刻な事態を想像したらしい。そのおかげで(?)、彼は逆に現場をあんまり見ることがなく、私はさえぎる手の隙間からしっかり見たという形になった。

今、東京メトロが進めているようなホームのドア設置はどちらといえば賛成じゃなかったのだが、こんな事態があるなら、致し方がないこと・・・なのか。