『全てがゼロ、だから成功する』 黒田敏夫

全てがゼロ、だから成功する―地図王への道

全てがゼロ、だから成功する―地図王への道

昭文社という名前は知らなくても、どの家庭にも1つくらいは同社の地図が置いてあるのではないか*1。そのくらいいまや地図出版社で不動の地位を築いている昭文社の創業者、黒田氏の自叙伝。

海鮮問屋でのつらい丁稚奉公を経て、一旗あげるべく上京した黒田氏は、歩合制で地図を売り歩く営業職につく。持ち前のガッツとカンのよさ(経験に裏打ちされたもの)でたちまち地図のトップセールスマンとなり、60年に独立して昭文社を設立。「たべあるき地図」「ミニミニマップ」「マップル」など次々にヒットを飛ばしていき、ついに東証一部上場まで果たした日本一の地図出版社となる。

とまぁ、一言でいえばサクセスストーリーである。彼の経営哲学がつまっている。それは、とにかく大胆でスピード第一。自他ともに認める超ワンマン経営で、決断は即断即決。3秒で決まるというから驚き。一代で業界トップまで上り詰める人は、やっぱり突き抜けている。

地図、旅、街歩き食べ歩きの昭文社のイメージからは、どこまでも熱く激しく猪突猛進でかけ抜ける社長の姿が想像できないが、こうやって出来た出版社だったのか。ある成功した出版社の歴史としても、また地図出版の歴史としても楽しめる。が、こういう経営者のしたで働くのは大変だろうなぁ。

*1:そういえば今、話題をさらっている「震災時帰宅支援マップ」もここの刊行物だ