『「お先に失礼!」する技術』 柴田英寿

「お先に失礼!」する技術  「断る」「決断する」「切り上げる」「見極める」ための極意

「お先に失礼!」する技術 「断る」「決断する」「切り上げる」「見極める」ための極意

タイトルどおり、「お先に失礼」するためのタイムマネジメントを説いた本。

短時間勤務をしている私は常に「お先に失礼!」しているのだが、そういうワケありでもない人が、毎日定時にあがるのは、かなりの勇気が必要だろう。著者は日立製作所という重厚長大な企業に勤めていながら、定時あがりを実践し、できた時間により東大の先端研の講師やら学会の理事、交流会などの活動を幅広く行っている。なんてすばらしい。

そんな著者が培ってきたノウハウをあますことなく紹介しているのが本書なのだが、「お先に失礼」するしかない私としては、「効率のよい仕事のこなし方」や「周りへの気遣いの仕方」など参考にさせてもらうべき点が多かった。つまり、「早く帰りたいなぁ」ともくろんでいる人はもちろん、「早く帰らなくてはならない人」にも効く本なのだ。

「組織からはじかれずに、自分の時間を持てるようになるには、人間関係についての深い配慮と、仕事を効率よく進められる高い技術の両方が必要になります」(p19)というように、求められる水準は結構高い。それをしないことには信用されつつも、お先に帰ることはできないからだ。また、小手先のテクニックではなく、もっと大局的なアドバイスをしている(とはいえ、めちゃくちゃ具体的な、コピーのとり方やメールの書き方のコツなんかの紹介も多々あるけど)。

無駄な時間をトコトンなくし、手際よく会議や資料作りをこなして・・・となると機械みたいな冷たい人間になりそうだが、著者は「情」や「つきあい」みたいなものを否定しているわけではない(でも1次会で、しかも途中でも切り上げて帰るっていう徹底ぶりはスゴいよなぁ)。周りへの気配り法なんかもかなり詳細に書いているし、「志」を持つなど情熱的な面も必要なのだ(あたり前か)。

ちなみに、育児休暇あけしばらくは、周りがまだ働いている時間に「お先に失礼します」と帰るのに違和感を感じていたものだが、今やそれがすっかり日常。本書のなかで「(定時に帰るのを)何日か続けると、「あの人は定時に帰る人なんだ」という看板(=ブランド)を確立できます」とあったが、そうなってしまえば周りも自分も「そんなもの」と思うようになるもんだ。

ただ、実践するのは結構難しいところも。というか、結局本当に頭のいい人じゃないとこんなに効率よく仕事をこなし、周りに認めてもらえる人になんてなれないよぅ、と泣き言を言ってみたり・・・。

装丁:原てるみ+坂本真理(mill design studio) イラスト:浦野周平(Shu-Tang Grafix)