『食のほそみち』 酒井順子

食のほそみち (幻冬舎文庫)

食のほそみち (幻冬舎文庫)

この本はタイトルどおり「食」をテーマにしたエッセイ。相変らずの酒井さん的視点が面白い。

だって、冷蔵庫をみて「未決箱」だなんてふつう思う*1?ラップ見て、現代人はラップ依存症だなんて思う*2「フラン」(ポッキーを太くしたようなお菓子)を見て、「ポッキーヘの愛とイラつき」が売れの原因って思う*3

ほかにもそうそう、とうなづくことしきり。コ難しいことを考えないで、まったりと読むのに最適。

なかに、料理雑誌の編集者の話がでてくる(「料理本編集者の運命」)。同業他社の話は面白い。編集部には「うちには大さじがないけど、どうすればいいか」や「オリーブオイルのかわりにサラダオイルをつかってもいいか」という思わず「自分で考えろーーーっ」と叫んでしまいそうになるようなお客さんからの問い合わせも多いという。ジャンルも違うし、どこのどなたか知らないが、お互いガンバリマショーと言いたくなった(笑)。

巻末には、穂村弘氏の解説が付いている。ある記者が酒井さんとの対談をセッティングしてくれたが、お会いするのがとても「怖かった」という話から始まっている。酒井さんの「鋭い観察力」と卓抜な「名づけの力」で自分でも見えていない何かを暴かれるのでは?という恐怖を感じるというのだ。わかるなぁ。酒井さんにお会いできたらと思うと、非常に嬉しいけど、でも「こんな私でゴメンナサイ」みたいな気分になりそう・・・(すみません、小心者なので)。
結局穂村氏は、お会いした際「私を「名づけ」てください。」と口走ってしまう(!!)。結果、「●●●●」という「それこそは、かつて一度も思いもしなかった、そして、私という存在を芯まで貫く言葉」を聞かされたという。この伏字になっているところは、なんなんだー。酒井さんはいったい何といったんだ。気になりすぎて悶々。

装丁:平川彰(幻冬舎デザイン室) イラスト:岡田里

*1:食べ残しの食品をとりあえず「未決箱」である冷蔵庫にいれておいて、罪の意識を回避しているなんて思う?

*2:同じく、余ったものをピッとラップして食べ残しの罪から逃れてるって思う?

*3:ポッキーは大好きだが、「チョコが食べたい」という欲求は満たされないイライラを見事解決したのがフランという説