『13階段』 高野和明

13階段 (講談社文庫)

13階段 (講談社文庫)

内容としては、犯行時の記憶を失った死刑囚の冤罪をはらすため、不思議な縁で雇われた刑務官と元犯罪者が、死刑囚の「階段を登った」というかすかな記憶を手がかりに、10年前に起きた犯罪事件を解き明かしていくというもの。死刑囚の処刑が刻一刻と近づく中、必死に調査する2人が、つきとめた真実は・・・・。

一言で言えば、「おそろしい」小説。

圧倒的な筆力(テーマは重くズシンとくるが、一気に読める)、元犯罪者と心情描写のすばらしさ、周到に張りめぐらされた伏線(あまりに多すぎて、最後はみんながみんな疑わしく思えてくる)、「死刑」制度についての鋭く刺さる問題提起、死刑執行の描写(非常に生々しく、刑務官側の心理もリアル)・・・どれも「おそろしい」くらいなのだ。

ちなみに、本書(文庫版)の解説は宮部みゆきだが、この解説もいい!小説の解説って、形だけ整えましたってのが多い気がするが、これは宮部さんの立場ならではエピソード(江戸川乱歩賞の選考の様子など)や語り口で愛情をもって書かれていて、読後感をさらに強めてくれる。

映画化もされているようだが、この小説は映像よりも活字のほうが、「おそろし」くて楽しめると思う。