『マガジン青春譜』 猪瀬直樹

川端康成と大宅壮一 マガジン青春譜 (文春文庫)

川端康成と大宅壮一 マガジン青春譜 (文春文庫)

猪瀬氏というと、道路問題で孤軍奮闘頑張っているおじさん(失礼!)という印象しかなかったが、本書を読んでイメージがガラッ。

大変失礼しました。すばらしい作家だったんですね。反省。

はっきりいって長いし、出てくる人物も多く、時代もときどき前後するが、最後まで面白く読めた。

本書は、サブタイトルにもあるように、川端康成大宅壮一(おおやそういち)の2人を中心として描いた、大正期の出版界を探ったもの。文藝春秋を立ち上げた菊池寛や、新潮社を立ち上げた佐藤義亮、芥川龍之介島田清次郎横光利一賀川豊彦なんかも出てくる。

性格や生い立ちは全然違うが、ふたりとも投稿少年で(当時は投稿欄が1/3くらいある雑誌がターゲット別にあったらしい)、学年は違うが同じ旧制茨木中学に学び、上京し、お金に苦労し、悩み苦しみ、まわりまわって生きているところといい、共通点が多い。

これを読むと、「ノーベル賞作家」だろうが、マスコミ界の大家だろうが、若い頃はたいしたことないんだなぁ、ひとりの人間なんだなぁと思ってしまう(そこから「何か」見つけられ、なしとげていったことがすごいんだろうが)。「青春譜」というだけあって、成功する前に話が終わっているから余計にね。

創生期の雑誌史、明治・大正期の文学史と当時の文士たちの生活ぶりがわかるお得な一冊。

★関連サイト
猪瀬氏のサイト
http://www.inose.gr.jp/
大宅壮一文庫(彼の蔵書からスタートした雑誌専門の図書館)のサイト
http://www.oya-bunko.or.jp/