『辞めない理由』碧野圭

辞めない理由

辞めない理由

WMStyleのレビューで知った子持ち編集者が主人公の小説『辞めない理由』。ストリーはとてもベタで、かつ勢いのある筆運びのため、一気に読めた。

主人公和美は、女性誌の副編集長という激務をこなしつつ、小学校1年生の娘を育てている。職場のイジメにも近い派閥争いに破れ、長年勤めてきた編集部を屈辱的な追い出され、閑職に追いやられる。その間、子供のいじめ、夫との無理解、先生との行き違い・・・さまざまな問題が彼女を襲う。新雑誌準備室という名だけの部署に行かされ鬱々としているが、やがて自分なりのテーマ=「ワーキングマザーのための雑誌を作る」を見つける。頼りないと思っていた部員や非協力的だと思っていた他部署の力も得て、カリスマシンガー(もちろんワーキングマザー)を担ぎ上げることができ、等身大の雑誌『ワーキング・マザー』が大成功を収めるという話。

まず思ったこと。和美が作った「ワーキング・マザー」という雑誌を見てみたい(笑)。今のところリアルでワーキングマザー向けに作られた雑誌は『Biz-mom』だけだが、なんだかイマイチ感があったので、いったいどんなしあがりになっているんだろう、と。ワーキングマザーの立場からも編集の立場からも興味津々!

小説の前半に描かれている和美の働き方は、厳しい。子どもを持っているからといわれないよう、自分を厳しく律し、ひたすら仕事に打ち込んでいる。帯に「負け犬たちよ、これが子持ちワーカーの圧倒的リアルだ!」とあるが、正直自分の仕事って、和美の仕事ほどきつくない。なので、なんだかこれがワーキングマザースタンダードだとすれば、今の自分が申し訳ない気がしてくる。恵まれすぎているのか?子持ち編集者だったらこのくらいするべきなのか?自分の頑張りがたりないのか?でもそこまでしなくてはワーキングマザーと呼ばれないなら、山が高すぎではないか・・・。

ただ、前半の和美のようなカリカリした真っ直ぐすぎる人が同僚(上司)だったらやっぱりやりにくい。だからこそ、小説でも編集部を追い出されてしまうのだが。後半で和美も少しずつ柔軟性が出てくるのだが、やっぱりしなやかに働くワーキングマザーでありたいと思う。

ワーキングマザーはいわずもがなだが、「母」の要素がない人でも、つまり男女既婚未婚子どもありなしにかかわらず働く人すべてにとっても、感じることは多くあるはずだ、と思った。


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