『蛇にピアス』 金原ひとみ

蛇にピアス

蛇にピアス

突然思いたって、昨年の芥川賞受賞作、『蛇にピアス』を読んだ。

主人公は、なんとなく付き合うことになった男アマの影響で、自分の体をピアスやら刺青で「肉体改造」に躍起になる19歳の少女ルイ。彼女は、世の中がたるくて、何のために生きているかよく分からなくて、生きているという実感もない(だからこそ、「肉体改造」にのめりこんでいったんだろうけど)。アマとルイに刺青とピアスの穴を
あけたのは、彫り師のシバ。シバはルイを求め、ルイはそれにこたえていたが、ある日彼女をとても大切に思ってくれていたアマが突然いなくなり、状況は激変する。彼はなぜ突然いなくなったのか。真実を悟ってしまった彼女は、なにを思う・・・?

1時間ほどで読み通せる分量と、一気に読ませるだけの展開のうまさ。だが、陰鬱な気持ちにもなる。世の中の暗い部分を見ると、心の中でどよんと淀んだものができるのだがそれと同じ。こういうアングラな世界をモチーフにしないとこの作品は成り立たないと思うし、全体をおおう虚無感とあいまってそれが共感を呼ぶベースになっているんだろうが。

装丁・装画:葛西薫