『[新版] 団塊の世代』
- 作者: 堺屋太一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/04/08
- メディア: 文庫
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書名から生まれて、いまや日常用語にまでなった「団塊の世代」。その元になった本が、最近新版となって文庫で出ていたので、読んでみた。
名前だけが有名で、実際の本については全然知らなかったのだが、予想小説の形式を取っているのにまず驚いた*1。勝手なイメージで、「団塊の世代」についての分析の本だと思っていた(思い込んでいた)からだ。
小説が書かれたのは、1970年代半ば。短編が4つ集まった形になるが、それぞれ舞台は、80年代前半、80年代後半、90年代半ば、90年代後半。主人公はバラバラ、主人公の仕事などもバラバラだが、団塊の世代の男性というところだけ共通している。
著者本人が、「新版によせて」で「改めて読み返して見た。そしてそこに描かれているのが三十年後の現実に合っており、古さを感じさせないのが歎しかった」から「ひと言も変えなかった」と言っているように、確かに古さがない。不思議なほどすんなりと読める。「世代」にこれだけ注目して、未来予想図を小説に落とせる、作者の力に改めて驚かされる。
逆にいえば、「なんだ、そのころから問題視する人がいて、指摘されていたにも関わらず、改善されることなく、その方向にいってるんじゃん」ともいえる(もちろん、数年のズレなどはあるが、そんなことは関係ない)。大きな人口の塊が出来たことにより、社会にどんな影響を及ぼすか、たとえば、大量雇用からやがてイビツな人口構成になること(会社としては人件費を押し上げ、それによってリストラが大量に行なわれること)、医療費の破綻が起こること、土地の問題などなど。
どの話も企業人の等身大で書かれていて、面白く読めるのだが、結末がないというか、暗い未来を暗示して終わるのがつらいなぁ。
なお、今回の新版では、「新版によせて」の部分が解説になっているが、ここもすばらしい。
この小説の「テーマ・マターは膨れ上がった人口の塊の加齢化現象」であるが、「この世代は、単に数が多いだけではない。共通の認識と性格を持ち、社会経済に重大な影響を与える」と認識したのは万博が終わったころらしい。団塊の世代の特徴を、「戦後を知らない」「モノ不足を知らない」「テレビの中で育ってきた」「戦後平等教育を受けている」などとして切り取っている。
いまでこそ当たり前に語られることだが、まだ団塊の世代が若かったころ、輝かしい未来を見つめる人は多くいただろうが、「問題視」するひとは少なかっただろう。
今後、元気な「六十代の消費者という大市場」ができ、自ら「働き費う繁栄」をとげるとあるが、そうなったら、今言われている2007年問題の吹き飛ぶ・・・かな?
*1:しかも、それは堺屋氏がうちたてた形式らしい「新版によせて」より