『ニート フリーターでもなく失業者でもなく』 玄田有史/曲沼美恵

ニート―フリーターでもなく失業者でもなく

ニート―フリーターでもなく失業者でもなく

この言葉を知ったのは、春くらいだっただろうか。本書が出たときは「ついに」といった感じだった。しかも、著者(の1人)が玄田先生。これは読まねばと、即購入(その割にしばらく積読してたけど・・・)。

ニートというのは、「働くことにも学ぶことにも踏み出せない人」のこと。Not in Employment, Education or Trainingの頭文字だ。もともと英国で問題になったことばだが、日本では少し解釈を変えつつも、徐々に浸透してきている。

バイトなどでなにかしら収入を得ている「フリーター」や、職はなくとも働く意志のある「失業者」ともまた違う彼ら。15〜24歳で、40万人(2003年)もおり、増加の一途をたどっている(2000年からの3年で2倍以上!)。

言葉はまだまだ知られていないけど、今後ますます社会問題になっていくだろう(失業率は毎月ニュースになるけど、ニートはこの数にも入ってない。問題にされにくのも問題?)。 なぜなら彼らは、「働かない」のではなく、「働けない」から。それはなぜか。

「14歳」というキーワードのもと、本書の中ではそれを考えている。特に大きな問題が「中卒者」「高校中退者」。もちろんそれ以上の学歴をもつ人でも、ニートになっているが、低学歴ほど深刻な問題になっている。早い時期にニートになった彼らは、数年後、職に就いている可能性が低い。

そもそも日本では、学校で職業意識を高めることはあまりされていない(少なくとも私の学生時代は皆無)。「どうして働くのか(働かなくてはならないのか)」「何になりたいのか」など、社会にでる基礎をちゃんと考えることをしないまま、「勉強」だけ進んでいく。親もまた「学生は勉強していればいい」「とりあえず学校を出てくれれば」とその先の問題は眼中にない。そしていざ就職活動を始めるときになってやっと、「ん?」と思うのだ。社会や職業について何も知らないことに気付き、また何をしていいのか分からなく立ち止まってしまう。

彼らを心を捕らえた部分なんかは香山リカ氏の『就職がこわい』を想起させる。『就職がこわい』は大学生だったが、そんなに変わらないなぁ。

このままの状態が続けば、「ニートになるくらいなら、フリーターに」といわれるようになるのだろうか。ちなみに本書では「フリーター」を肯定的に捉えている。

最後に、本の構成そのものについては、2人の共著というのはちょっと無理があるような。学者の視点から定義や今後のあり方を考える玄田先生の文と、多くのニートや職業体験をした中学生にインタビューしてまとめた曲沼氏のテイストがあわないような・・・。

就職がこわい

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