『子どもの脳の発達 臨界期 敏感期』 榊原洋一

さすが著者は専門医なので、「臨界期」の歴史的経緯を詳しく説明している。 が、「早期教育について」については、著者自身言っているように奥歯に物が挟まった言い方で終わってしまっている。んで?え?終わり?って感じ。

著者の意見は基本的には、「臨界期」なんてものは科学的に証明されているものでもないし、その時期に何かをしなくてはどうかなってしまうというわけではない(あとで何とか成ることもある)ので、あまり気にしすぎるなというスタンス。早期教育については、全面否定をしているわけではないが、勧めているわけでもない。

はじめから"「臨界期」を科学的かつ一般向けに記した書"だと思って読めばなんてことはないのだが、「早期教育と脳の発達の関係を科学的に解く!」なんて言われるといつになったらその話になるんだろうとイライラさせられる。編集者の意図(読者をより広くひきつけたい)かな。

ちなみに、「敏感期」というのは、「臨界期」では限定的過ぎる(その時期をすぎるとダメというニュアンスがある)のを、現実に即して刺激に「敏感」である時期という意味でつけられた新しい名前だそうだ。

早期教育の教材は、専門家からみればトンデモ的な論旨が、あたかも当たり前のように宣伝文句につかわれ、うっかりとするとそれを信じてしまいがちな危険性をはらんでいる。本当に言葉巧みに、耳障りよく書いてあるからねー。自分の子どもを「天才に」とまではいかなくても、(自分のことを棚にあげても)できれば頭をよくしたいと思うのは世の親の常。うっかりだまされないためにも、この手の知識を少しは知っておいたほうがいいかも(生兵法は怪我のもと、とならないようにしなきゃだけど)。