『就職がこわい』 香山リカ

就職がこわい

就職がこわい

就職「できない」というよりは、「しない」若者たち。不況や絶対的求人数の減少など外的要因も多いが、精神科医の筆者によるとそれは若者たちの内面の問題も大きいという。

香山さんは、今の若者たちの特徴を、極端な自己評価の低さ(「どうせ私なんか・・・」。自己愛の裏返しだと思う。傷つくのがコワイ)と、ゆがんだ完ぺき主義(自分らしい仕事があるはずだ。それが見つからないなら働かなくてもいい)などから鋭く切り込んでいる。なんにしても漠と「不安」を持ち、それに打ち克つ力がないまま不完全燃焼感にさいなまれつつ流されている。読んでいるだけで、息が詰まりそうな状態だ。

ひるがえって自分の就職活動を思い出すと、ほんと甘い考えだった。「社会に出る」「お金を稼ぐ」ことがまったく分かっていなかった(幼かったというのと、勉強不足というのと)。でも、親のスネかじろうとか、なんとかなるさとは思えず、なにがなんでも働かなくちゃならんという気持ちはあったので、普通の人よりかなり遅れたものの冬前には内定をもらい、春に社会人としてスタートできた。

そんなスタートでも、なんとか今まで働き続けて来られている。就職活動のときは、なにがなんでも編集者と思ったわけではないが(というよりむしろ初めは違う業界を見ていた)、気がついたらずっと業界にいつづけている。そんなもんだよ、わはははは。

著者も言うように、ヘタに自分探しやら、やりたい仕事を探そうと思うほうがつらい。いっそ、しないほうがいいかもしれない。「走りながら考える」でいいじゃないか。

でも、今はなんだかんだで働かなくても生きていける社会。親に頼るにしろ何にせよ、就職しなくても食うには困らない人がウン百人単位でいるんだから、日本って豊かなんだよなぁ。